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目指すは「飲食店1,650店舗」の加盟。新潟の食産業が、行政の“一番の相談窓口”になるための4本柱

目指すは「飲食店1,650店舗」の加盟。新潟の食産業が、行政の“一番の相談窓口”になるための4本柱

公開日:2026.01.29

更新日:2026.01.28

各地域支部長をインタビューする本連載。第4回目は今年3月に設立された新潟県支部・支部長の和田亮さんと事務局長を務める仲川寛志さんのお二人にお話を伺いました。インバウンド客の獲得や食のブランディングなど、新潟の食産業が抱える課題と今後の取り組みについてお話しいただきました。(聞き手=食団連地域統括本部長・山崎聡氏)

食団連新潟県支部 支部長/株式会社イデアル 代表取締役 和田亮氏

スノーボーダーを目指し、新潟県の苗場スキー場でアルバイトを始めた事がきっかけで新潟へ移住。スノーボードの大会などで顔見知りでもあった、旬魚酒菜五郎古町店の先代のオーナーに声を掛けられ、五郎でアルバイトを始める。その後、先代オーナーより事業経営権を譲渡され、30歳で経営者に。
モットーは「料理は良い食材をなるべくわかりやすく、シンプルに。」
現在は、飲食店経営、飲食店コンサルタント、通販事業などを展開。経営する全店舗にMQ会計を導入。未来会計マスター講座修了、MG研修インストラクター。

食団連新潟県支部 事務局長/株式会社MS&Consulting リレーション事業本部 マネージャー兼チーフコンサルタント 仲川寛志 氏

入社17年目。新潟県佐渡市出身。2024年に新潟へ居住地変更。外食企業中心に70社以上を担当。前職は飲食店プロ店長。現場の実行力を高める支援を実施。

支部設立の背景と地域課題、共感から始まった連携の動き

山崎:新潟県支部設立に至った経緯を教えてください。

仲川:新潟が抱える地域的な課題感に対して、危機感や共鳴感が非常に高かったことが大きいと思います。共通認識としてあった課題の一つはインバウンドの少なさ、そして人口減少や少子高齢化、新潟の食のブランド力の低さです。こうした課題に対し、横の連携を強化し、新潟の食を一つにする団体の必要性を感じていました。

▲食団連新潟理事メンバー

山崎:和田さんが理事長へのオファーを受けた時は、どうお考えでしたか?

和田:私は新潟で飲食店を展開する企業の立場で、コロナ禍、市長や県議の方々に陳情に行っていたんですが、10人程のグループでバラバラに市役所や議会に行っていました。県議会議員の友人に相談した際も、「数を集めなきゃだめだよ」と言われ、飲食業界をまとめる団体が必要だ、と4年前くらいから話していたんです。

ただ、その後にミシュランガイド新潟ができるなど、忙しくなってしまったので、出遅れてしまいました。仲川君と山崎君からこのオファーを受けた時、やっと地方にもこの動きが起ってきたかと嬉しく思いました。最初は、アドバイザーとして関わっていこうとも考えましたが、業態、業種をニュートラルな立場でまとめられる方が進めやすいと思い、理事長として引き受けることにしました。立上げ段階は、頭を下げることも多いでしょうし、私はそういうことに慣れているので、しっかり下地を作れると思います。

インバウンド対策や食のブランディング課題……、これまでの"しょうがない"に挑む

▲毎月開催している交流会での議論の様子

山崎:新潟県支部として、どのようなことを地域的な課題としてとらえていますか?

和田:仲川君が言ったように訪日客を獲得できていないことや、人口減少という課題については、「しょうがないこと」だと思っています。ただ、そのしょうがないことを、飲食店も県もなんとかしたいと思っているんです。訪日客が多く訪れている地域に行くと、当然受け入れるインフラができている。新潟はまだまだ、訪日客をお迎えするような対応がそもそもできていないのが現状だと思います。

仲川:新潟は「食のブランディング」ができていない、という大きな課題があります。

和田:そうですね。「売り」を絞れていないんですよね。5年位前まで、米・ニューヨークに県のアンテナショップ「新潟館」というのがありましたが、県運営なので、「売り」を絞って商品を販売することは当然できず、県内の団体や事業者の商品をまんべんなくショップに並べて販売してました。ただ、いろんなものがありすぎて、新潟を説明できていない。昔でしたら、新潟と言えば「米と酒」でよかったんですが、いまや米とお酒は日本中どこでも美味しい。仲川君がいったように、新潟はいわゆる「ブランディング」が上手ではないと思います。

中長期目標と行政連携、設立3年で県内飲食店1,650店舗の加盟を目指す

▲1月セミナーでの懇親会の様子

山崎:新潟県支部の活動目的や中長期的な目標を教えてください。

仲川:食団連のMVVを基本として活動計画を作成しています。中長期的な戦略としては、会員を増やす、としていますが、私たち新潟県支部も含む食団連の活動の認知と理解を広げる、というのが中期的なテーマです。

会員数拡大の目標は、3年で新潟県内飲食店全体の15%、1,650店舗の加盟を目指します。

もう一つは行政とのパイプを強化していく。最初は市から、関係構築を図っていきたいと思っています。行政関係者との座談会や交流会を通じて、相互理解を深め、連携できる部分を見つけて、プロジェクトとして走りだせればいいなと思っています。

山崎:行政との関係構築はどのように行っていますか?

和田:行政との関係構築は、これから本格的に取り組んでいくことではありますが、設立時に多くの関係者とつながることができたのは、立上げメンバーがみなさん協力的に動いてくれたことが大きかったですね。3月に開催した設立式典には、副知事はじめ、多くの行政関係者にご来場いただきました。これからの関係構築次第ですが、行政が食関連の相談をする際、一番に声をかける窓口にしてもらうことが目標です。

仲川:ボードメンバーに行政とのパイプが強いメンバーに加わっていただいたのも、重要なポイントだと思います。

二つ目は、設立式典をかなり大きな規模でしっかりやったということですね。地元メディアすべてにお声がけをし、大々的に報じていただきました。その結果、設立時点である程度の認知度を上げることができ、今後の行政の方々とのコミュニケーションが円滑に行えるように仕掛けました。

設立式典がもたらした成果――行政との接点と認知度向上の突破口に

▲2025年3月17日に開催された同支部設立記念式典の様子

▲同式典で挨拶をする和田支部長と司会進行の仲川事務局長

山崎:設立式典後の行政関係者からの反応は、どうでしたか?

和田:ご来場いただいた議員の皆様から「良い会だったね、これからの活動に期待しているよ」とのお声をいただきました。

仲川:式典後に新潟市から早速交流会への参加希望や、市の取組についての拡散のご依頼や相談をいただき、設立式典を大々的に開催し、「数が力になる」ということを実感しています。

支部活動の4本柱――有事体制構築、業界連携、ルール改正、ブランド強化

▲同式典にてスピーチする食団連地域統括本部長の山崎氏

山崎:新潟県支部が掲げるビジョンについて教えてください。

和田:新潟県支部独自のミッションやビジョンを作るよりも、食団連の新潟県支部として、食団連のMVVを踏襲しつつ、戦略や計画を各地域特性に合わせて作成していくのが良いと思っています。食団連のMVVと揃えたほうが、気持ちが入りやすい。そこがぶれるのはよくないと思いました。

山崎:新潟県支部の今後の活動のイメージについて、お聞かせください。

和田:今年の3月に設立したばかりなので、本当に一部にしか我々の活動は知られていません。我々は日本飲食団体「連合会」なので、新潟県内で最大の団体である新潟県社交飲食業生活衛生同業組合 から一緒にやりましょう、と言われるようになったら、ビジョンに近づけている一つの証しになるんじゃないか、と考えています。

仲川:この食団連新潟県支部の活動は、大きく4つに分かれると考えています。

1つは、有事に対応できる体制構築。コロナ禍のように、また外食産業が不利益を被らないために、行政などの対外的なステークホルダーとの情報共有できる体制を構築できていること。

2つ目は、飲食業界内の連携強化です。さきほど申し上げた通り「新潟の食」のブランディングの文脈も含め、業界内での情報共有、連携強化を進め、業界内シナジーを高めていくことを目指します。

3つ目は、おそらく条例改正などのルールメイキング。現状の飲食業界における変なスタンダードになってしまっているルールの改定に取り組んでいきます。

そして最後に、飲食業界対1次2次産業との業界連携強化です。作り手である彼らと売り手である私たち飲食業界が一貫したメッセージを持つことで、「新潟の食」としてのブランド力強化につながってくると考えています。

山崎:行政や業界内外と連携しながら、地域課題の解決に取り組み、新潟の食の未来を繋いでいく、ということですね。

設立式典成功の舞台裏、半年間の緻密な準備と仲間の力

山崎:これまでの地域支部活動を通じて得られた成果を教えてください。

和田:これまで得られた成果としては、地域課題に対して真剣に考えている人が、実はこんなにいる、と分かったことは嬉しい成果の一つでしたね。これまで飲食関係者が、経済同友会や商工会議所などの集まりに顔を出すのは非常に稀だと思っていましたので、今回の活動を通じて、各地の熱い人たちに出会うことができました。

仲川:まだ設立したばかりで、本格的な活動はこれからですが、これまでの成果として一番大きかったのは、私たちと同様の危機感を持ち、このMVVに共感して、新潟県支部のボードメンバーとして参加してくれる人がこんなにもいたことですね。共感し合える仲間がこんなにいるんだ、と再認識できたことがシンプルに嬉しかったですね。「新潟捨てたもんじゃない」と思えました。

▲設立記念式典に来場する参加者たち

山崎:設立記念式典開催までの道のりと式典当日の話を教えてください。他支部立上げの参考になると思います。

仲川:結果から申し上げると、「イタリア軒」という歴史ある重要建築物で開催させていただき、当日は230名の方にご参加いただくことができました。そのうち飲食関係者は140名、さらに行政関係者は、副知事、財務副大臣、運輸局副次長、県議会議員、酒造組合会長など、食団連からは佐藤会長代行、菊地顧問など多くの方々にご来場いただきました。あらためてご来場いただいた皆様に御礼申し上げます。

式典終了後にさっそく多くの方に会員登録をいただき、現時点で250店舗にご登録いただいています。スポンサーとしてご参加いただく賛助会員企業は、15社ほど(2025年4月14日取材当時時点)。さらに、この式典がきっかけとなり、行政からもご相談事項をさっそく3件ほどいただいています。

山崎:式典までの準備が大変だったのでは?

仲川:そうですね。式典開催に向けた準備開始は、2024年9月ごろだったので、約半年強かけて実行していったことになりますね。この式典開催プロジェクトを進めていく上で、ボードメンバーにどれだけアクションしてもらうかが一番の肝になりました。例えば、最初の会議が6人だったとしたら、次回はそれぞれが一人ずつ連れてきて、12人にする。大規模な式典イベントをやるには、実働部隊が少なくとも20〜30人は必要ですからね。私としては、一人ひとりにしっかりコミットいただくために、細かくアクション管理をしていきました。式典実行委員会の立上げとマネジメントが非常に重要でしたね。

和田:私が意識したのは、いつもの仲の良いメンバーだけで組織してはだめだ、ということです。食団連のMVVに共感してくれている、というのは大前提にありますが、あえて仲の良い人たちで組織するのではなく、これまで関係性が薄かった人にも積極的に声をかけていきました。既成コミュニティをもとに組織づくりをしては、「また同じメンバーで何かやっている」と思われがちですからね。私は新潟県内のいろんな人を存じ上げていると思っていましたが、この活動を通じて新たな素晴らしいメンバーと出会うことができました。

▲記念式典でのご来賓と執行理事メンバー

山崎:ボードメンバーに多様な業種・業界の方々を巻き込めたのは、とても重要でしたね。

和田:そうですね。そうでなければ、今後の活動においても他業界からの参加ハードルが上がってしまいますからね。

仲川:顔の広い営業の方など、飲食企業以外の有力なメンバーを巻き込めたこともよかったですね。

和田:「月刊にいがた」、「KOMACHI」といったローカルメディアを誘致できたのも、式典後の効果につながった点だと思います。

山崎:和田さんとして、式典を終えてどんな心境ですか?

和田:やっとスタートが切れた。ゼロからようやく一になった、という心境ですね。きちんと準備をして、いいスタートが切れたと思います。これからは目標に向かって、一歩ずつ進んでいくだけです。

今後の活動の中で大切にしたいのは、いかに若手中心にするか、ということ。いわゆる「重鎮」と言われる人に気を遣う人も多いですが、彼らにはアドバイザーとして関わっていただく方がいいと思っています。

山崎:最後に、他地域支部に対するメッセージをお願いします。

仲川:支部設立や活動の方法論は、いくらでもあると思いますが、私たちのやり方が他の地域支部の一つの解になれば嬉しいです。重要なのは、より多くの飲食店を巻き込み、行政とのパイプを作っていくこと。それぞれの地域に合った方法を見出していってほしいと思います。

和田:支部立上げ時に、いろいろな壁にぶち当たると思います。頭を下げてお願い事を聞いてもらうこともあります。ですが、食団連のMVVを原点に、いかに個人的な感情をなくして活動していくか、が推進力になると思います。日本食団連がいかにして立ち上がって、何を目指しているのか、というのを考えれば、個人的な利害や感情は関係なく活動できる。壁はたくさんあると思いますが、必ず乗り越えられると信じています。

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記事担当ライター