長野の山々に囲まれた街から、オンラインの波を軽やかに乗りこなす男がいる。
LINEヤフー株式会社の秋山直紀さんだ。
メッセンジャーアプリから始まり、いまやニュース、ショッピング、オークションと、生活の隅々にまで浸透する同社。その中で秋山さんは「食」という、人と人がもっとも温かくつながる領域に向き合っている。
「私たちのミッションは、“WOWなライフプラットフォームを作り、日常に「!」を届ける”ことなんです。Yahoo! JAPANの“!”と、LINEの“WOW”の精神。その二つが融合しているのが、今のLINEヤフーです」
彼が所属する飲食業界向けの事業部は、2020年秋に発足した。奇しくも、コロナ禍が始まった年だ。
外食が難しくなり、飲食店とお客様の距離が遠のいた時期。
だが、人の絆は絶たれなかった。
むしろ、LINE公式アカウントを通じて、新しいつながりの形が芽吹いたという。
会えない時代が生んだ、もうひとつの“常連関係”
「メールでは届かない距離感を、LINEのメッセージなら保てる。お店の方々が“また来てね”と伝えられる。その温度を大切にしています」
秋山さんはそう語る。
LINE公式アカウントは、いまや大手チェーンから個人店まで幅広く利用されている。
かつては「導入に高額な費用がかかる」と言われた時代もあったが、現在は月額0円から始められるという。
チラシやダイレクトメールの代わりに、LINEでお客様に直接声を届けられる時代になった。
さらに注目を集めているのが「LINEミニアプリ」だ。
アプリをダウンロードしなくても、注文や予約、ポイント管理などがユーザーのLINE上で完結する。
「例えばモバイルオーダーなら、スタッフ不足の解消に繋がりますし、注文データをマーケティングに活用もできる。飲食店様の課題をテクノロジーで解決するツールなんです」
食の現場で求められるのは“人”の温もり。
だが、秋山さんが見据えるのは“デジタル”がその温もりを支える未来だ。
食団連で得たのは、数字では測れない「志」
そんなLINEヤフーが、一般社団法人日本飲食団体連合会(通称・食団連)に参加したのは3年前。
「きっかけは“ご縁”でした」と秋山さんは笑う。
発足当初から関わる理事たち──グルメサイト、予約サービス、メーカー、行政。
その中心には「食を通じて日本を元気にしたい」という共通の想いがあった。
LINEヤフーはもちろん、個人としての秋山さんも、そこに共鳴した。
「食団連の方々は皆さん“志”がある。単なるビジネスの連携ではなく、業界の未来を考えている。
売上という意味でのメリットはまだ少ないかもしれませんが、ここでのご縁が私たちのブランドを育ててくれていると感じます」
イベントや部会にも積極的に参加し、時には運営側として汗を流す。
たとえば一昨年開催されたLINEヤフー主催の「Hello Friends! W!th LINEヤフー」では、能登地震の被災地支援の一環として、現地の飲食店を招き、LINEミニアプリを活用した店舗やキッチンカーブースを食団連と協力し合い実施した。
「現場で感じたのは、本気度の高さです。みんな、食を通じて社会を良くしたいと思っている。だから自分も、もっと役に立ちたいと心から思いました」

「ローカル」が、食の未来を変えていく
秋山さんがいま最も情熱を注いでいるのは「地域との共創」だ。
実は彼の拠点は東京ではなく長野。
自身の父親の出身地でもあり、妻の実家でもある北信越地方に縁を感じ、2025年の春に移り住んだ。
想像以上の自然と食の豊かさや地域の素晴らしさに圧倒された。
「長野って、発酵文化も果物も水も米も素晴らしい。でも観光客は通り過ぎてしまう。
東京から新幹線で来ても、善光寺を見て金沢に行ってしまうんです。
だからこそ、もっと“地域のファン”を増やしたいと思ってます」
地域に根ざす飲食店と、都市に暮らす消費者を結ぶ。
そのために、LINE公式アカウントやLINEミニアプリを活用し、観光とECをつなげる構想を描く。
「一度訪れたお店とLINE公式アカウントでつながり、後からECで特産品を買えるようにすれば、関係人口が増える。また、ふるさと納税といった、地域の推し活にもつながる。
ローカル(地域)の食と人を、もっと近くに感じられる仕組みを作りたいんです」
秋山さんにとってLINE公式アカウントやLINEミニアプリは「ツール」ではなく「文化をつなぐ橋」だ。
“うちなんて”と言わずに、誇りを持とう
インタビューの最後に、「食の未来をどう描きたいですか」と尋ねると、秋山さんは少し考えて、穏やかに語った。
「ローカルで働く方々と話していると、“うちなんて”という言葉をよく聞くんです。
でも、どの地域にも胸を張れる食文化がある。
その誇りを、もっと自信に変えてほしい。
LINEヤフーとしても、食団連としても、それを支えるのが使命だと思っています」
食を通じて、人が自分の地域を誇れるようになること。
その小さな誇りの積み重ねが、日本の“食の未来”を明るくする。
秋山さんの言葉には、静かな熱が宿っていた。
おわりに
秋山さんは言う。
「食団連の活動には“浪漫と算盤”の両方が必要です。利益も大事だけど、夢を語ることを忘れたくない」
コロナ禍で深まった“食の絆”を、デジタルの力でさらに広げていく。
LINEヤフーが掲げる「WOW」は、驚きだけでなく、人と人を結ぶ温もりの言葉でもあるのだ。
取材協力:LINEヤフー株式会社
コーポレートビジネスドメイン バーティカル(CB)SBU 事業推進ユニット Divリーダー
秋山直紀 氏
企業URL : https://www.lycorp.co.jp/ja/