25支部構想と個店連合会。"オール外食"に向けた設計図
前回は、深見浩一常務理事が食団連にたどり着くまでの経緯と、統括する6セクションの全体像を伺いました。第2回のテーマは、その中身。地域支部をどう広げるのか、日本の飲食店の大半を占める個人経営の店にどう手を届かせるのか。聞き手は引き続き、株式会社てっぺん代表取締役・居酒屋甲子園9代目理事長の和田裕直氏です。
ゼロから作らない、という支部戦略
和田:地域支部の立ち上げには、相当な労力と難しさがあると思います。47都道府県に一つずつ作っていくうえで、深見さんが大切にされていることは何でしょうか。
深見常務理事:地域には、すでに居酒屋甲子園さんをはじめ各団体の支部や集まりがあるんですよね。だから僕は、ゼロから作って大きくしていくというより、既存のところをうまくまとめていくほうがいいと思っています。
たとえば支部の会員集めは、居酒屋甲子園の支部にやってもらう。ある団体の支部と一緒にコラボセミナーをやってもらう。仲間集めは仲間集めとして役割分担する。企画やセミナー、勉強会も同じです。
和田:それは僕もずっと感じていました。居酒屋甲子園も全国に12地区あるので、以前ご一緒させていただいたときに、居酒屋甲子園が食団連の青年部のような形で連携できるんじゃないか、と。もっともっとできることがあると思っています。

深見常務理事:いま実際に何が起きているかというと、居酒屋甲子園の支部の勉強会をやった翌月に、食団連の地域支部の勉強会があって、来ている人が同じだったりする(笑)。うまくコラボできたらな、というのは構想として持っています。ただ、もう少しお互いが分かり合わないと難しいだろうな、とも思っていますが。
支部の一番の役割は「行政との接点」
深見常務理事:じゃあ、食団連の地域支部としての機能は何かというと、やっぱり一番大事なのは行政との接点であり、行政への人脈作りだと思うんです。そこにエネルギーを使えるような役割分担がうまくできればな、というのが理想形です。
和田:勉強会と行政との接点は、そもそも別機能だと。
深見常務理事:飲食の勉強会は「自分の飲食店を良くするためにインプットして、自社に活かして、地域が良くなる」という流れですよね。これはどの団体さんもやっている。そこにプラスして、行政の方とどう絡んでいくのか。これは別機能だと思うので、一つのチームで2つやろうというのは、やはり大変じゃないかなと。だから立ち上げと拡大は、来年も引き続きテーマですね。
また、大きい団体さんや地域支部がイベントをやっていても、なかなか横に紹介ができていない。であれば、みんながキャッチアップできる仕組みを作りましょう、と。先週の部会で頭出しをさせてもらったところです。
日本の飲食の8割は、1〜2店舗
和田:どの団体にも所属されていない方々に向けて、個店連合会という受け皿を作られましたよね。これはどういう組織なんでしょうか。
深見常務理事:地域の団体に集まって、参画して、地元を盛り上げようという意識で経営されている方って、実はかなり「マニアック」なほうなんじゃないか、と僕はもともと思っていたんです。自社の繁栄、店舗運営、従業員の確保、教育、商品開発……やることが山ほどある。その中で、そういう場に出てくる方は限られる。

逆に言うと、出てこられない方々には情報が届いていない。先般の決済会社の件でも、破綻したことすら知らずに、いまだにカードが切れてしまっていた、というようなことが起きていました。有名店の物件が普通に市場に出てきて、事業計画すら立てられずに閉店して終わり、ということも起きている。
和田:情報が届いていない、というのが根っこにある。
深見常務理事:日本の飲食の80%以上が1店舗か2店舗と言われている中で、ここにアプローチしたいんです。チームになりたい。オール外食を実現したい。全国49万店舗のうち、11万〜12万店舗くらいが個店だと思うんですけど[^6]、そこをつなげていきたい、という思いがあります。
たとえば個店の方が食団連と一緒に何かやろうとなったとき、「そういえば地域にはこういう支部がありますよ」「◯◯屋さんなら、この協会はいかがですか」「回転寿司の協会もありますよ」「お好み焼きもありますよ」と、橋渡しができれば、よりいいなと。
和田:入口が一つあることで、その先が全部つながる。
深見常務理事:食団連では年6回ほどアンケートを取っていくのですが、個店の方の声がなかなか聞けなかった。その声も集めていくために、箱を作りましょう、と。食団連は「飲食団体連合会」なので、団体に入っていただかないと入れない。だから団体という形で箱を作る。それが個店連合会です。
課題は2つ。「なんで入らなあかんの?」「メリットは?」と冒頭で聞かれたときに、きちんと返せる準備をしておくこと。そこで、オフィシャルパートナーの皆さんに「商売につながるリード獲得になれば」ということで、強烈なインセンティブを出してくださいとお願いしました。現在16社ほどから、個店連合会に入ったらこういう特典があります、というものをいただいています。
空中戦と地上戦、そしてJ曲線
和田:個店の方々に、そもそも食団連の存在を知ってもらうための活動は、何かされているんですか。
深見常務理事:広報チームが優秀なので、日々発信していただいています。ただ、キャッチアップしてもらうまでには時間がかかる。そこで次は「地上戦」をやってみようと。オフィシャルパートナーさんの展示会などにブースを出させてもらう。個店のオーナーさんは展示会によく行かれると思うので、そこでやろうという企画を、いまオフィシャルパートナーさんと進めているところです。

和田:空中戦と地上戦の両方で。
深見常務理事:飲食店って、1回で合意まで至るなんてレアケースなんですよ。「3回聞いたな」「3人くらいから触れたな」というのが重要で。「なんか聞いたことあるよ」という空中戦のメディア戦略。オフィシャルパートナーさんも含めて「個店連合会というのがあるみたいですよ」と言ってもらう地上戦。そして展示会のようなイベント。いろんなところで3回触れてくれれば、どこかでフワッと上がると思うので、J曲線の上がるところを楽しみに、いま仕込みをしているところです。
和田:ちなみに、現時点で何社くらい集まっているんですか。
深見常務理事:内緒です(笑)。
会員団体78、企業会員連合会は100社を目標に
和田:残りのセクションについても伺わせてください。
深見常務理事:会員団体は現在78団体に入っていただいています。表現の仕方はお任せしますが、これだけの会員団体を集めた連合会は、外食では最大規模ではないかと思っています[^7]。有事のときもそうですし、「食文化を未来に継ぐ」という理念からしても、日本全国にはたくさんの団体がある。いま全部洗い出してくれと依頼しているところですが、なるべく多くの団体に入っていただいて、いろんなレイヤーの方とつながって、その声を上げていきたい。今期は90団体を達成しそうです。
各団体さんにインタビューしていると、それぞれ固有の課題があるんですよ。もちろん外国人材の問題や消費税の問題は共通してありますが、たとえばイタリア料理の団体さんなら、イタリアの生ハムが入れられない問題が悩みのレイヤーとして高い。お好み焼き・たこ焼きの団体さんなら、いちばんの問題は「子どもがお好み焼きを焼けない」問題だと。
和田:大阪の子どもが、お好み焼きを焼けない……。
深見常務理事:そう。食文化が途絶えます、と。そういう各団体の課題を、僕らなりに「A団体とB団体をつないだらいいんじゃないか」とやってみたり、オフィシャルパートナーさんも含めてつないでみたり。共通項が見えてきたら、政策提言にもつなげていく。
企業会員連合会のほうは、個店連合会の「10店舗以上バージョン」です[^8]。大手さんは日本フードサービス協会に入られていることが多いので[^9]、そうでない中堅企業さんをリストアップして、今期100社を目標に一社一社の面談を積み重ねています。こちらは「食団連、知ってるよ」という経営者の方が多くて、活動報告をすると「応援するよ」と言っていただける。順調に開拓は進んでいます。
深見常務理事:僕のセクションは、要するに会員支援なんです。会員を拡げること、会員さんのお困りごとをヒアリングしてサポートすること、そしてその声をまとめて政策提言につないでいくこと。これが仕事です。
取材を終えて(和田)
「ゼロから作らない」「3回触れてもらう」「一つのチームで2つやらない」。深見さんの話は、どれも実務家の言葉でした。そして最後に出てきた「会員支援」という一言に、6セクションすべてが集約されている。次回は、その原点へ。時給800円の弁当屋から始まった深見さんの飲食人生と、「食産業庁」という到達点までを伺います。
出典・参考文献
[^6]: 店舗数は深見常務理事の発言に基づく。公的統計では、令和3年経済センサス‐活動調査において「宿泊業,飲食サービス業」の事業所数は50万7,102事業所。経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(サービス関連産業に関する集計)結果の概要」 https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/r3result/pdf/r03_service_giy.pdf
[^7]: 会員団体数は2026年7月24日時点の発言に基づく。食団連は2021年12月に14団体で設立され、2022年4月の設立総会時点で36団体まで拡大していた。一般社団法人日本飲食団体連合会 プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000093536.html
[^8]: 企業会員連合会は飲食・外食関連企業を対象とした食団連の会員組織。詳細は食団連公式サイト https://shokudanren.jp/
[^9]: 一般社団法人日本フードサービス協会 公式サイト https://www.jfnet.or.jp/