「飲食業は、人が人のために“おいしい”をつくる産業。
だからこそ、デジタル化の本質も“人のため”でなければ意味がないんです。」
穏やかに、しかし言葉に芯を感じさせる語り口で、株式会社インフォマート松尾尚志さんはそう話す。
20年以上にわたり飲食業界を支えてきたBtoBプラットフォームの老舗企業として、
インフォマートは「食とITの接点」を拓いてきた。
今、同社が掲げるテーマは“おいしい未来へ”。
そこには、テクノロジーを通して食産業に笑顔と余裕を取り戻すという願いが込められている。
飲食の「縁の下」を支える使命
インフォマートの主力サービス「BtoBプラットフォーム 受発注」は、飲食店とサプライヤーをつなぎ、発注から請求までをデジタルで一元管理する仕組みだ。
2003年のリリース以来、全国の飲食企業に導入され、業界の共通インフラとして発展してきた。
「リリース当時はまだ、PCに慣れている人が少なく、パソコン教室から始めるような時代でした。
それでも私たちは、『飲食業の現場を少しでも良くする』という想いだけでやってきました。」
今でこそDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が浸透しているが、インフォマートはそのずっと前から、現場の声に耳を傾けながら改善を積み重ねてきた。
厨房の熱気とともに、システムの裏側でもまた、静かな努力が続けられている。
「食団連」との共創――“業界への恩返し”
インフォマートが日本食産業連合会(食団連)に参画したのは、設立間もない頃。
その背景には、松尾さん自身の業界への想いがある。
「創業以来ずっと、飲食業の皆さんに支えられてきました。
ですから、この業界が良くなるための取り組みに協力しない理由はないんです。
食団連さんのように“日本の食の未来”を真剣に考える団体があることは、とても心強い。」
参加の動機は、営業的な打算とは無縁だ。
「新しいリードを得るためではなく、業界への恩返しのつもりでした。
理念に共感できる活動には、積極的に関わりたい。
その積み重ねが、結果的に自分たちの仕事を良くしてくれると信じています。」
「地域と生産者をつなぐ」支援の現場
インフォマートは、食団連の活動の中でも特に地域連携の取り組みに関わっている。
たとえば、能登半島地震の被災地支援プロジェクト「能登フードリバイバル」では、
石川県の協力会社に声をかけ、イベント出展の機会をつくった。
「弊社の取引先にも多くのメーカーや卸企業がいらっしゃるので、現場で困っている方々を少しでも支援できればと思いました。
“フードサプライチェーンのどこかにいる誰かを助ける”。
そういうことを、これからも地道に続けていきたいです。」
全国の食団連支部とも連携し、長野や北海道など地域支部の活動にも顔を出す。
「地域ごとに抱える課題は違います。
でも“おいしいを守りたい”という気持ちはどこも同じなんです。」

「おいしい未来へ」――FOODCROSS(フードクロス)の挑戦
そんな想いを形にしたのが、インフォマート主催のリアルイベント「FOODCROSS(フードクロス)」だ。
コロナ禍の最中に敢えてリアル開催に踏み切ったこのイベントは、「つなぐ」と「挑戦」をテーマに、
飲食業界のDX推進を掲げた。
「当時は開催そのものに賛否両論ありました。
でも、現場の声を直接聞く場が必要だと感じていたんです。
飲食の現場は、オンラインだけでは語り尽くせない“熱”がある。」
イベントにはインフォマートだけでなく、他のテックベンダーや飲食企業、サプライヤー企業も多数参加。
導入企業の担当者が同じブースに立ち、実際の苦労や成果を語り合う。
「導入企業の生の声がいちばんリアルなんです。
DXを成功させるには、“使う人の実感”が欠かせない。
その本音が共有できる場を作りたかった。」
また、「おいしい未来」とは、経営的に儲かるというだけでなく、その利益が従業員にも還元される未来です。
この産業に関わるすべての人々が物心両面でハッピーになる世界を目指したい。
現在はまだまだ課題に対しての対応に忙殺され、よい循環に慣れていない部分が多分にあると思います。
つながりを持ち、価格以外の価値も認め合える関係性を築くことが大切です。
そんな「おいしい未来」をみんなで考え、共有したいと思っています。

食団連への期待――“共に広げる力”を
インフォマートが今、食団連に期待しているのは「共に伝える力」だ。
「食団連さんは素晴らしい活動をされていますが、まだまだ一般には知られていないと感じています。
アンケートやイベントも、もっと多くの人が参加できるように、お互いのネットワークを掛け合わせて発信力を高めていけたらと思います。」
インフォマートとしても、セミナー共催や双方向の集客支援など、“業界全体の広報エコシステム”をつくる構想を描いている。
「情報を共有し合うことで、飲食業界が一体となって動けるようになる。
それが、結果的に食文化の持続性を高めることにつながるはずです。」
“デジタルの温度”を大切に
インタビューの最後、松尾さんは少し間をおいてこう語った。
「私たちはデジタルの会社ですが、
本当に大切なのは“人と人とのつながり”なんです。
効率化の先にあるのは、料理人がより良い料理をつくり、お客様と笑顔を交わす時間が増えること。
DXとは、人の幸せを増やすための道具だと思っています。」
20年以上前、パソコン教室から始まったデジタル化の道。
今、その道は“おいしい未来”へと続いている。
インフォマートはこれからも、食産業の縁の下で、静かに、確かに支え続ける。
取材協力:株式会社インフォマート
バイヤーリレーション&セールス部 部長
松尾 尚志 様
企業URL: https://corp.infomart.co.jp/