Food is People

お問い合わせ

トップ

/

インタビュー

/

うまい店が、きちんと見つかる世界へ ――movが挑む、飲食店の“できていない”をなくす仕事 

うまい店が、きちんと見つかる世界へ ――movが挑む、飲食店の“できていない”をなくす仕事 

公開日:2026.07.10

更新日:2026.07.10

うまい店なのに、見つからない。
営業時間が古い。
口コミに返信できていない。
外国人客が増えているのに、何を準備すればいいかわからない。

いま飲食店は、料理と接客だけでは勝てない時代にいる。

だが、本来店が磨くべきものは明快だ。
料理、サービス、空間。

それ以外の“やらなければいけない仕事”が増えすぎている。

「私たちは、そこを支える会社です。」

そう語るのは、株式会社movで飲食・店舗支援事業を担う 谷宏行氏
同社が掲げるのは、実に率直な言葉だ。

「店舗の、できていないをなくす。」

その一言に、現代の飲食業界が抱える課題が凝縮されている。

料理人は、本当は他の仕事をしたくない

谷氏はこう言う。

「飲食店の皆さんって、料理を作ることと、お客様に価値を届けることに情熱がある。
でも、それ以外の仕事は本当はやりたくないはずなんです。」

まさにその通りだろう。

Googleマップの営業時間更新。
口コミ返信。
複数媒体の情報整備。
外国語対応。
SNS運用。

これらは現代の店舗経営に欠かせない。
だが、厨房で鍋を振るいながら完璧にこなせる仕事量ではない。

movは、その“周辺業務”をテクノロジーで肩代わりする。

 「選ばれる店」は、情報が整っている

movのサービスは、いわゆるMEO対策や口コミ管理にとどまらない。
Googleマップ、グルメサイト、レビュー媒体など、各所に散らばった店舗情報を一元管理し、店がきちんと見つかり、迷わず来店できる状態をつくる。

「営業時間が媒体ごとに違う。
定休日が更新されていない。
それだけで、お客様は不安になります。」

なるほどと思う。

人は“行きたい店”を探しているようで、実際には“安心して行ける店”を選んでいる。

電話番号が違う。
営業中か不明。
口コミに放置感がある。

それだけで候補から外れることもある。

「情報を整えることは、集客というより信頼づくりなんです。」

 口コミは、宝の山である

movが面白いのは、口コミを単なる評価として扱わない点だ。

口コミをAIで分析し、店の改善点を抽出する。

たとえば「トイレ」という単語。
それがポジティブ文脈で使われているのか、ネガティブ文脈で使われているのか。

もし不満が多ければ、清掃オペレーションを見直す。

「口コミって、お客様が無償でくれる改善提案なんです。」

なるほど。
たしかに料理人が厨房で気づけないことを、客席側から教えてくれている。

これは、店の経営会議に近い。

 

インバウンドは“外国人対策”ではない

movのもう一つの強みは、インバウンド支援だ。

外国人客が増えている。
だが、どの国の人が、いつ、どこに来るのか。
そこまで把握している店は多くない。

同社は独自メディア「訪日ラボ」などを通じ、国別・地域別・時期別の来訪データを整理し、店舗へ活用提案している。

「例えば国によって連休のタイミングも違います。
そこを知っているだけで準備が変わります。」

さらに興味深いのが、口コミの“国別分析”だ。

ある店では、日本人客には「味が濃くてうまい」と好評。
一方、韓国語圏レビューでは「濃すぎる」という声が目立ったという。

逆に唐揚げは外国人客に非常に好評だった。

「誰に、何が刺さっているのか。
それが言語別に見えてくるんです。」

勘ではなく、データで売る。
これは飲食の新しい武器だ。

AIは、厨房の外で使えばいい

飲食業界でAIというと、配膳ロボットや自動調理を想像しがちだ。

だがmovの発想は少し違う。

「料理や接客の現場そのものより、その周辺業務をAIで効率化したいんです。」

たとえば口コミ返信。

外国語レビューが届く。
内容を翻訳する。
文面を考える。
英語や中国語で返す。

この一連の手間をAIが補助する。

ボタンひとつで返信案を作り、その国の言語で返すこともできる。

「返信した方がいい口コミをAIが提案する、そんな世界も実装したいと思っています。」

料理人は料理に集中する。
AIはその周辺で働く。

実に健全な役割分担だ。

 食団連に感じた“本気”

movが食団連に参加した理由も明快だ。

「飲食文化って、日本が世界に誇れるものだと思うんです。」

これまで業界の話題は、人手不足、コスト高、利益圧迫といった“守り”が中心だった。

もちろんそれも重要だ。
だが、それだけでは未来は広がらない。

「これからは外向きの視点も必要です。
もっと売れる業界、もっと誇れる業界にしていく。」

インバウンドはその象徴だろう。
世界中の人が、日本に食べに来る時代である。

そのとき必要なのは、個店の努力だけではなく、業界全体の連携だ。

「食団連は、それを国に届けられる場だと思っています。」

 食の未来は、“見つけてもらえるか”で決まる

どれだけいい料理も、見つからなければ存在しないのと同じだ。

どれだけ素晴らしい接客も、情報が古ければ来店されない。

どれだけ魅力ある店も、外国人に伝わらなければ選ばれない。

movがやっているのは、派手な仕事ではない。

だが、店が輝くための土台づくりだ。

「お客様に選ばれやすい店を、効率よく増やしていく。」

その積み重ねが、日本の外食文化を強くする。

厨房で生まれる一皿のために。
その手前にある、無数の“できていない”をなくしていく。

食の未来は、案外そういう裏方の仕事によって支えられている。


インタビュー協力
株式会社mov
谷 宏行さん