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「バラバラの声」を地域の力に変える。食団連北海道支部が描く、食産業の“官民連携”新時代

「バラバラの声」を地域の力に変える。食団連北海道支部が描く、食産業の“官民連携”新時代

公開日:2026.01.29

更新日:2026.01.29

2023年12月、各地域の飲食業経営審議会はより密なコミュニケーションを図れるよう、食団連の地域支部として新たな体制となりました。今後も続々と地域支部の設立が予定されています。
地域支部一覧はこちらからご覧いただけます。

本連載記事では、支部立ち上げの経緯やその活動内容、課題意識などについてお話しいただきます。第一回目は、北海道支部長を務める株式会社ラフダイニング代表取締役の大坪友樹さんにお話をお伺いしました。(聞き手=食団連地域統括本部長・山崎聡氏)

株式会社ラフダイニング 代表取締役 大坪友樹氏

1980年北海道北見市で生まれ、大学卒業後、家具商社勤務を経て、2004年に24歳で独立し、「懐飲庵(かいかいあん)」を開業。現在は居酒屋「もんきち」や「SACHI」など11店舗の飲食店を経営。また、飲食店経営にとどまらず、陸上養殖事業、水産品加工、卸売り・小売り事業を展開。地域社会に貢献することを大切にし、フードロス削減や従業員の労働環境改善にも積極的に取り組む。

コロナ禍〝組織〟の必要性を痛感、支部立上げへ。2024年、一般社団法人化で組織運営強化

北海道飲食業経営審議会(現・食団連北海道支部)立上げ総会にて

地域支部統括本部長・山崎聡氏:おはようございます、大坪さん。今日はお時間をいただきありがとうございます。まず、北海道支部設立に至った経緯を教えていただけますか?

大坪友樹氏:おはようございます。設立のきっかけは、食団連専務理事・髙橋英樹さんとのご縁とご恩が一番大きかったですね。髙橋さんがやろうとしていることに強く共感し、設立しようと思ったのがきっかけでした。地域から国へとつながるパイプがこれまでほぼ存在せず、コロナ禍だったということも、多くの飲食事業者の共感を得た契機になったと思います。
ご存知の通り、コロナ禍で飲食業界は非常に厳しい状況に陥りました。その中で、愛知支部(旧:愛知飲食業経営審議会)の事例を耳にし、同じように地域の飲食事業者を支援するための組織を立ち上げる必要がある、と感じたことも立上げを決意した大きな理由になりましたね。愛知支部は、一つのまとまった組織として要望を伝えることで、営業自粛要請に対する協力金が支給されるよう、行政を動かしていました。これは、私たち北海道でも団体組織として声を集めて動いていく必要がある、と痛感させられた事例でした。

山崎:なるほど。北海道支部の設立当初の目的についても教えてください。また、2024年6月1日に、北海道支部を一般社団法人化されたとのことですが、その意図についても聞かせてください。

大坪:これまで任意団体として2年間活動してきましたが、やはり地域の課題を解決しようと考えると、継続的な活動を通じて、様々なステークホルダーを巻き込み、域内の経済を動していく必要があります。そのためには事務局機能が必須だと考え、一般社団法人化することを決めました。

山崎:北海道支部の立ち上げ時には、道内の多くの企業を巻き込んだとうかがいました。活動していく上で、各企業とどのようなコミュニケーションをとっていましたか?

大坪:そうですね、最初は勢いで多くの企業に賛同、ご参加いただきましたが、やはり後から不義理が生じてしまいました。230社が同じ熱量で賛同し活動できているか、というとそういう訳でもありません。彼らにも能動的に活動に参加いただくためにも、確固とした組織体制やビジョン、定期的な活動、行政とのパイプを示す必要があると考えました。私たちの活動を通じて得た行政や地域企業・住民とのリレーションは、立ち上げ時から賛同してくれている彼ら同志へのリターンになれば、と思っています。

組織運営に「質と量」のバランスをー。会費制導入で、活動資金確保と質の担保を図る

山崎:組織の数(量)を優先するか、参加者の熱量(質)を優先するか、そのバランスは組織運営おいて非常に難しい課題ですね。

大坪:新しい組織では質を求めれば、量が出ない。量を重視すると質が薄くなってしまいます。

山崎:一般社団法人化する際の参加者数はどのくらい集まりましたか?

大坪:230社に変わりはありませんが、飲食店や支援事業者から年会費をいただく会費制に変更しました。しっかり活動を行っていくためには資金が必要です。支部の活動資金を確保しながら、一定の熱量の高さを担保できる。やはりだれでも参加できる組織では、数だけが広がり事務局としてもマネジメントができなくなる。まさにバランスが重要ですね。

山崎:北海道支部として、地域的な課題についてどのように捉えていますか?

大坪:組織的な課題としては、ピラミッド型の組織構造があり、上層部は行政とつながり対話できるメンバーである必要があります。一方で、経済的な課題に共感する参加者を増やしていくことも重要です。具体的には、独自の健康保険制度の設立やインバウンド観光事業における食産業の魅力的なコンテンツの発信などを考えています。

山崎:現在の組織運営体制について教えてください。また、課題とその解決方法についてもお伺いします。

大坪:組織づくりにおいて、立ち上げ期と継続期とそれぞれに異なる課題があると思います。立ち上げ期については、先ほど申し上げた通り、質と量のバランスを図りながら、組織を拡大、運営していくことが重要だと考えています。一方、継続期では、いかに目的を達成していくことができる体制を構築するかが重要になってきます。その点では、名誉顧問に著名な方に入ってもらうなどの工夫をしています。行政団体と連携し、オフィシャルな活動を行うための座組を今まさに整えているところです。

山崎:活動費用はどのように捻出されていますか?

大坪:年間収支を計画し、目標値を設定しています。会員から年会費をいただくことで資金を集めています。

山崎:役割分担についてはどのように考えていますか?

大坪:地域行政と対話したり、活動計画、運営を行ったりなど、組織の上層部として関わりたいと思ってもらうために、ビジョンやミッションに共感するメンバーを増やすことが重要です。質の部分を拡大することは難しいですが、執行部を刷新し、活動を活発化させています。

月1回「バイブス会」で行政との関係構築。一方的な「要求」ではなく「連携」

山崎:北海道支部として行政との関係構築の目的をあらためてうかがえますか?

大坪:食産業の発展のために共通の柱を作り、その上で必要なアジャストを行います。行政に対して一方的に要求する、ということはしません。ただし、連携していくことは重要です。北海道の食産業の現状を知っていただくだけでも価値があると考えています。

山崎:行政と関係構築を行う際のポイントについて教えてください。

地域行政関係者との交流会「バイブス会」の様子

大坪:基本的に「バイブス会」を通じて関係構築を行ってきました。気を付けるべきことは「気を付けないこと」ですね。柔軟に対応することが重要です。行政側にもやりたいことがありますが、異動が早いため熱意が継続しにくいという課題はあると思います。ただ、食に対して並々ならぬ熱意をもってくれているキーマンとしっかり繋がって、長くお付き合いをしていくことが、行政との関係構築においては非常に重要です。

札幌市と連携協定締結、「ボウサイフェス」開催など、行政、企業などステークホルダー巻き込み活動

札幌市との連携協定締結式。署名する大坪氏(写真左)と札幌市長・秋元克広氏

山崎:これまでの地域支部活動を通じて得られた成果について教えてください。

大坪:札幌市との連携協定の締結や大型イベントの開催など、食産業としての役割を強化する成果が得られたと思っています。

山崎:北海道支部の具体的な活動内容について教えていただけますか?

NoMaps内で開催された「ボウサイフェス」のポスター(上)と開催時の様子(下)

大坪:昨年の大きな活動実績として挙げるなら、北海道・札幌市で行われるカンファレンス、展示会、イベントなどが同時多発的に行われるフェス「NoMaps」で、北海道支部として「ボウサイフェス」を開催したことですね。飲食事業者を含む食産業は、災害時にも非常に重要な役割を担えることを、あらためて来場者の皆様にご理解いただける機会になったのではないでしょうか。ほかにも、毎月「バイブス会」という交流会を開催し、行政関係者や現役議員の皆様との関係構築を図ってきました。

山崎:「バイブス会」とは具体的にどのようなものですか?

大坪:行政関係者の方や議員の方々などを招いて、飲みながらより近い距離で壁を取り払って交流、対話しながら、関係構築を図ることを目的とした交流会です。毎月1回開催するのは労力のかかることですが、「バイブス会」を重ねてきたことで、皆無だった行政との関係性がある程度築くことができたと実感しています。

山崎:最後に、他の地域支部に対するメッセージをお願いします。

大坪:まずは、この活動自体を楽しまなければ続けられないと思います。経済を回し、自分たちの経営課題や実現したいことを話し合い、その過程で各ステークホルダーと関係を構築していくこと。行政ありきではなく、自分たちから活動し、ぜひ域内の経済を盛り上げていっていただきたいです。

山崎:貴重なお話をありがとうございました。

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記事担当ライター